大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)2336号 判決

被告人 朴学千

〔抄 録〕

弁護人等の控訴趣意第一点について。

現行刑事訴訟法が当事者訴訟主義に重点を置き、いわゆる起訴状一本主義を採用し、公訴事実には訴因を明示して記載することを要するものとして、被告人の防禦を十分ならしめようとしていることは所論の通りである。しかし訴因とは審判の対象を限定するため公訴事実を犯罪構成要件にあてはめて法律的に構成したものをいい、同法第二五六条第三項は、訴因を明示するにはできる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならないと規定してその記載についての指針を示しているのである。従つて被告人に対する本件起訴状(昭和二九年一二月二四日附、昭和三〇年三月一五日附)記載の公訴事実は論旨摘録の通りであるが、これによれば被告人の覚せい剤不法所持及び覚せい剤不法譲受の覚せい剤取締法違反事実の日時、場所、方法等が示されていて、同法違反の構成要件にあてはめて法律的に構成された特定の具体的事実が記載されていることを認めることができるのであるから、その公訴事実には訴因が明示されているものといわねばならない。

只その公訴事実のうち共謀にかかる事実について、共謀の日時、場所、現実に各自の分担活動した行為の態様が示されていないけれども、共謀にかかる覚せい剤取締法違反の構成要件に該当する具体的事実が明示されている以上共謀の重要な内容は明示されているものということができるのであるから、右のような共謀そのものの日時、場所、各自の分担行為が示されていなくとも、共謀にかかる事実は訴因の明示を欠くものとすることはできない。しからば本件起訴状は所論のように訴因を明確にしないものではなく、原審が被告人に対する本件公訴を棄却しなかつたのは相当であり、原審の訴訟手続には所論のような違法はないから論旨は理由がない。

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